分離発注とは何か

分離発注とは、お客様が建築工事を発注する際の発注方法の1つで、全てをゼネコンなどに一括して発注するのではなく、お客様と設備工事会社が直接契約する方式のことを言います。

お客様が設備工事会社と直接契約することにより、品質とコストの透明性が確保できるだけでなく、非常時の迅速対応や設備のランニングコストの低減などにつながります。

分離発注方式と一括発注方式

多様化する社会のニーズに対応するために

我々の社会や生活を支えているのは電気であると言っても過言ではありません。一般家庭で電気を使っていないところはよほどのことがない限りありませんし、仕事・通勤・通学など、どれを取っても電気と切り離して考えることはできません。

さらに最近では省エネ傾向に拍車がかかり、お客様のご要望や社会のニーズはより複雑に多様化しています。それらに柔軟に対応するために、私たちは「分離発注方式」を推奨しております。

専門知識を持ったスタッフとお客様が直接やり取りすることにより、多岐にわたるニーズに対応することができます。直接やり取りすることにより、進捗状況を確認したり、満足度の高い設備を作るためにディスカッションを重ねたりすることが可能となります。

電気工事会社の各専門家の構図

この点、情報の非対称性がもたらす一方通行になりがちな一括発注では、満足度の高い設備が完成するとは言い切れません。「自分が想像していたものと施工会社が描いていたものが違った、完成したら予想と違うものが出来上がった」などという現象も起こるかもしれません。

設備を「作って終わり」にしない

電気設備は一般的に、最初に作るためにかかる費用(イニシャルコスト)より、その設備を運用するためにかかる費用(ランニングコスト)の方が大きくなります。

設計から構築、維持管理、保全、改修、廃棄に至る全ての費用のことを設備のライフサイクルコストと言いますが、この全体の費用を小さくするためにはランニングコストの圧縮が不可欠です。言い換えれば、「作って終わり」よりむしろ「作ってからが大事」という事になります。

ランニングコストを抑えるためにイニシャルコストが大きくなったとしても、全体から見ればコストの低減につながるケースもあります。

運用するためにかかる費用を圧縮するためにはどうすれば良いか、イニシャルコストとランニングコストのバランスをどう取れば良いか、古くなった設備を改修する際はどのように改修すれば今後のランニングコストを抑えられるかなど、電気工事会社の専門スタッフがご提案致します。

一括発注方式とはどのようなものか

一括発注方式の全体像一括発注方式とは、お客様が建築会社に一括して発注し、建築工事の全体管理も建築会社に委託する方式のことを言います。

つまり、お客様が直接電気工事会社とやり取りする事はなく、全て建築会社を通してのやり取りとなります。

従って、お客様のご要望を電気工事会社が直接聞くことができず、お客様と電気工事会社の間で情報の非対称性(双方の持っている情報量に違いが生まれること)が生まれます。

また、建築コストの増加が発生した際に、管理費等として充当するはずだった設備の予算を利用して対応することが多くなります。そうなると結果的に設備がお客様の希望したものと異なったものになってしまう可能性が高くなります。

さらに、お客様と電気工事会社の距離が遠いため、ご要望や問題が発生したときに情報伝達が困難となります。まず建築会社の窓口担当者へ連絡し、お客様のご要望等を伝える事になります。

この内容を電気工事会社の各担当者へと伝達する事になりますが、建築会社の窓口担当者は電気設備の専門家ではないため伝達内容が不明確となりがちになります。

伝達内容を聞いた電気工事会社の各担当者たちは、誰がどのような対処をするべきなのかを判断するために多大な時間を要する事になってしまいます。

一括発注方式を採用した場合のデメリット

分離発注方式を採用するメリット

分離発注方式の全体像分離発注方式ではお客様と電気工事会社が直接やり取りするためコストの透明性が高くなるというのが最大のメリットになります。

設備の予算が確定できることにより、設備のために組まれた予算を100%活用することができます。従って、お客様のご要望に答える設備を提供できます。

分離発注方式を選択した場合、お客様と電気工事会社の双方が各設備に関する情報を理解している状況が生まれます。

ご要望や問題が発生したとき、どの設備に関して対処が必要か的確に判断でき、専門知識・技術を持つ担当者と直接連絡することができます。

これによって電気設備工事会社からの対応を受けるまでの所要時間を大幅に短縮できます。

分離発注方式のメリット

2つの発注方式の違い

分離発注方式Q&A

Q1.分離発注方式の普及状況は?
A.現在、公共工事の設備工事は「分離発注方式」が基本です。公共工事は、入札や契約の過程、契約内容の透明性の確保が重要なため、国及び都道府県ではほぼ100%分離発注方式となっています。こういった面からも適正な契約には分離発注方式が優れていると言えるでしょう。

Q2.なぜ分離発注方式をすすめるのですか?
A.分離発注方式にすることで、責任の範囲が明確になります。また、設備にかかるコストがハッキリするので、お客様にとってメリットがあると言えます。そして、一番のメリットは、お客様と設備工事の専門家が直接話すことができ、お客様のご要望を的確に汲み取れるので、お客様にとって満足のいく設備を提供できることです。

Q3.分離発注方式にするとコストが多くかかるのでは?
A.分離発注方式にするとお客様の意向を直接伺うことができ、専門の電気設備工事業者が長年蓄積したノウハウを駆使して省エネルギー等トータルコストが最も安くなる設計・施工を提案できます。例え、イニシャルコストが高くなっても、ランニングコストやリニューアルを含めたライフサイクルコストの低減につながっていきます。

Q4.分離発注方式は管理が大変そうですが…
A.分離発注方式にした場合、お客様自信が全体管理をする必要があるため、工程管理や安全管理をしなければなりません。しかし、電気設備工事会社には豊富な施工経験と資格を有する技術者・技能者が在籍しています。いつでもご相談に乗りますので安心してお任せ下さい。

Q5.ゼネコンに全部お任せした方が楽だし、特に希望もないのですが、それでも分離発注方式を選ぶべきですか?
A.電気設備は、建物において非常に重要な役割を担っています。お客様が分離発注方式を選択することで、設備工事の専門家と直接話す機会が増え、より良い設備を適正な価格で手に入れる可能性が高まります。

Q6.分離発注方式を採用して品質は大丈夫ですか?
A.工事の品質に関する成績を確かめるには、国土交通省の請負工事成績評定をご覧いただくことで確認できます。また、工事会社の経営に関する客観的事項についての情報は、同じく国土交通省の経営事項審査結果をご覧いただくことで確認できます。

Q7.分離発注方式で発注したいのですが、業者はどうやって選べば良いのですか?
A.電気設備工事会社から「技術提案」と「見積」を取って総合評価をすれば、お客様の希望に沿った会社を選ぶことができます。神奈川電気工事工業組合中地区本部には実績・技術力共に備わった会社が多数在籍しています。ぜひ利用してみて下さい。

Q8.リニューアル工事における分離発注方式について教えて下さい。
A.電気設備のリニューアルは、古い設備を単に新しいものに替えるだけではありません。停電を伴う作業や特殊な技術を必要とする施工等、専門の知識や技術が必要であるため、必ず電気設備工事会社で施工します。直接お話しいただければ、省エネルギーを含めたお客様にあった提案・施工をすることができます。

分離発注方式と一括発注方式の一連の流れの相違

参考サイト

当ページは日本電設工業協会のサイトを参照して制作しております。